ダティ仏文化相、汚職事件がパリ市長選に影響必至か?

フランスのラシダ・ダティ文化大臣(59)とカルロス・ゴーン元ルノー・日産自動車会長(70)が、汚職と影響力行使の罪で軽罪裁判所への公判付託を命じられたことが23日、明らかになった。この決定に対し、パリ市長選への立候補を表明しているダティ氏は猛反発し、担当判事を公然と非難。元法務大臣であり、自らも国立司法学院出身であるだけに、その言動は波紋を広げている。公判日程は未定ながら、すでに法廷は波乱含みの様相を呈している。今回の公判付託は、捜査当局による長期にわたる捜査の結果下されたものだ。

焦点となっているのは、ダティ氏が欧州議会議員を務めていた2009年から2012年にかけて、ルノー・日産グループから合計90万ユーロ(約1億5000万円)を受け取ったとされる支払いである。検察側は、これらの支払いが同グループのためのロビー活動に対するものであったものの、実際には明確な業務が伴っていなかったとみて、「国際機関の公選された公務員による受動的汚職」および「影響力行使」に当たると指摘している。

疑惑の発端は2018年11月に日本の司法当局が金融不正の疑いでカルロス・ゴーン氏を逮捕したことに遡る。この逮捕を受け、ルノー・日産グループは内部の支払い状況を徹底的に精査。その過程で、2009年10月付でルノー・日産の子会社とダティ氏の間で交わされた報酬契約書が浮上した。この契約が、不正な金銭授受の証拠として捜査当局の注目を集めることになった。ゴーン氏は現在レバノンに逃亡しており、裁判への出廷が焦点の一つとなる見込みだ。

ダティ氏は、一貫して自身の無実を主張。受け取った金銭は法務コンサルティングの正当な報酬であったと反論している。同時に、公判付託の決定後、報道陣に対し「私の権利は踏みにじられた」「手続きには不備があった」などと述べ、担当判事に対する強い不満を表明した。過去に司法の最高責任者である法務大臣を務めた人物が、現職の判事を公に批判するという異例の事態は、フランス国内で大きな議論を呼んでいる。

今回の公判付託は、来年3月に予定されているパリ市長選挙を控えるダティ氏にとって、極めて厳しい政治的逆風となることは避けられない。与党・再生の重鎮であり、エマニュエル・マクロン大統領の信頼も厚いとされるダティ氏は、同市長選での勝利を目指しているが、一連の疑惑と裁判は、有権者の間に不信感を抱かせる可能性がある。