オルリー、過去最高の利用者数を更新へ

パリ南部の玄関口であるオルリー空港が、未曽有の成長を遂げています。特にこの夏は記録的な数字を叩き出し、9月の乗客数は310万人超。これは2019年比で実に18%増という驚異的な伸びです。空港を運営するADPグループのデータを見ても、2025年第3四半期の交通量は、コロナ禍前の水準を15%も上回っています。この勢いが続けば、2025年の年間利用者数は約3500万人に達し、2018年のピークを超えて、歴史的な最高記録を更新することが確実視されています。昨年のオリンピック開催による好影響もさることながら、オルリー空港の躍進は一過性のものではないようです。

なぜ、オルリーはこれほどまでに利用者を増やしているのでしょうか。その最大の要因は、間違いなく「格安航空会社(LCC)」の積極的な誘致にあります。現在、27社ものLCCがオルリーを拠点としており、特にヨーロッパや地中海地域への新規路線開設が14も増えたことが、この成長を強力に後押ししています。スペイン、イタリア、マグレブ諸国に加え、ポーランドやブルガリアといった東欧路線も充実しました。伝統的なキャリアであるエールフランス航空が、傘下のLCCであるトランサヴィアにその役割をシフトさせていることも、この流れを象徴しています。

さらに、2024年に開通した地下鉄14号線の延伸も、空港の魅力を決定づけました。パリ中心部からのアクセスが格段に向上したことで、より多くの利用者がオルリーを選択するようになったのは自然なことです。

しかし、この成功は手放しで喜べるものではありません。空港の活況は、近隣住民の生活に深刻な影響を与え始めています。交通量の増加、特に騒音問題は深刻で、住民ネットワーク「Drapo」の副会長を務めるリュック・オフンシュタイン氏は、「夏の期間はまさに地獄だ」と訴えています。彼は、「1分半ごとに飛行機が頭上を通過している」と、騒音公害の現状を厳しく指摘しました。非商業便の数は減ったものの、年間の総フライト数は21万6千便に上る見込みで、騒音規制と経済成長のバランスをどう取るか、空港側にはより慎重な対応が求められています。

オルリー空港の快進撃は、利便性の向上と経済効果をもたらす一方で、地域社会との軋轢も生み出しています。今後、この「成功の諸刃の剣」にどう向き合っていくのか、引き続き注視が必要です。

【出典】20minutes 10月18日配信記事 『Comment fait l’aéroport d’Orly pour battre des records de fréquentation』(https://www.20minutes.fr/societe/4180014-20251018-comment-fait-aeroport-orly-battre-records-frequentation