トゥールーズ自然史博物館 新企画展「私を飼い慣らしてみなさい!」

人類と動植物の共進化の歴史をたどる特別展が、トゥールーズ自然史博物館で始まる。2025年10月17日から2026年7月5日までの期間で開催されている新企画展「Domestique-moi si tu peux!」(私を飼い慣らしてみなさい!)は、「家畜化・栽培化」の多面的な世界を深掘りする。
会場の中心には、もし人類が動植物を家畜化・栽培化しなかったらどうなっていたか、という根源的な問いに答えるコーナーが設けられている。明るい木製テーブルには、パン、チーズ、ジャムといった加工品を含む果物や野菜(全て模造品)が並ぶが、傍らのボタンを押すと、そのプロセスを経なかった場合に「残るもの」が明かされる仕掛けだ。
本展は、犬や猫といった身近な家畜だけでなく、植物の栽培化にも大きく焦点を当てる。さらに、家畜化の概念を医学、芸術、材料開発といった驚くべき領域にまで広げ、その影響の広大さを示す。
来場者は、エントランスホールに君臨するアジアゾウ「パンチ」に迎えられた後、まずは焚き火のコーナーへ誘導される。オオカミが犬へと変貌を遂げる遥か昔、人類が家畜化という壮大な旅を始めたのは、火の使用からであったことを示唆する構成だ。
展示はテーマごとに整理され、「家畜化」の本質、すなわち「長年の選択を経て、個体の遺伝的変化が生じ、特定の特性を獲得(または喪失)すること」を分かりやすく解説する。また、狩猟用のハヤブサや一部の観賞植物など、人間が頻繁に利用しながらも家畜化の特性を持たない境界事例にも触れ、この概念の奥深さを探る。人類と動植物の関係性の再考を促す、必見の展示となりそうだ。