2026年度予算 国民議会で激論 所得税はインフレ連動へ

フランス国民議会は2026年度予算案の第一読会で、政府の緊縮路線に反する複数の重要措置を採択した。所得税の増税を回避し、残業代の非課税化を拡大するなど、家計を直接支援する修正案が右派・左派の連携により可決され、財政再建を目指す政府は予算審議の序盤から苦しい展開を強いられている。
焦点となった所得税(l’impôt sur le revenu)の税率体系(バーレム)について、国民議会は政府が提案した「凍結」案を拒否し、ローラン・ヴォキエ氏(LR)の提案通り、1.1%のインフレ率に連動させる修正案を採択した。
政府案が実現していれば、インフレにより事実上の増税となり、新たに20万世帯が課税対象となって国庫に20億ユーロの増収が見込まれていた。しかし、議会はこれを認めず、幅広い勢力の連携により、一般家計の購買力を保護する姿勢を打ち出した形だ。
また、労働面では残業代の非課税化が大幅に拡大された。これまでの7,500ユーロという非課税上限を撤廃する修正案が、右派勢力や極右、一部与党議員の賛成多数で可決された。
左派からは「一部の勤労者に集中する優遇策」として強い反発が出たが、可決された。この措置による財政コストは約10億ユーロと見積もられており、政府の財政再建計画にさらなる重荷となる見通しだ。
国民議会は、高齢者施設(Ehpad)の費用負担を軽減するため、入居費用の減税措置を、非課税者も恩恵を受けられる税額控除( crédit d’impôt)に転換する措置を採択した。低所得者層を支援するこの措置に対し、政府は6億ユーロのコスト増を理由に反対している。
さらに、養育費の課税方式が逆転する修正案も可決された。これまでは支払う側が非課税、受け取る側が課税だったが、今後は受け取る側が非課税となる。この変更は低所得のひとり親世帯の負担軽減に繋がるとされ、年間約4億5千万ユーロの財政改善効果も見込まれている。
今回の採決結果は、政府の当初予算案が議会で大幅な修正を迫られることを示しており、今後の審議も難航が予想される。
【出典】20minutes 10月25日配信記事 『Budget 2026 : Impôt, heures sup… On vous résume ce qui est passé (ou non) à l’Assemblée nationale』(https://www.20minutes.fr/politique/assemblee_nationale/4181584-20251025-budget-2026-impot-heures-sup-resume-passe-non-assemblee-nationale)

