【ニュース】麻薬取引問題、都心部の富裕層に矛先 マクロン大統領が資金源と批判

フランスにおける麻薬密売を巡る治安危機が深刻化する中、エマニュエル・マクロン大統領は2025年11月19日の閣議で、麻薬取引の資金源について踏み込んだ発言を行い、波紋を広げている。
政府報道官のモード・ブレジェオン氏によると、マクロン大統領は「時として都心部のブルジョア(富裕層)が麻薬密売人に資金を提供している」と厳しく非難した。これは、麻薬消費と密売組織による暴力の連鎖に対する、政府の新たなアプローチを示すものだ。
大統領は、この問題は需要側にも責任があるとし、「一方で(密売による)死者を嘆きながら、他方で仕事帰りには夜に(麻薬を)消費し続けることはできない」と述べ、消費者が間接的に暴力と死を助長している構造を指摘した。
大統領は、この問題に対処するため、警察による取り締まりだけでなく、「予防と啓発政策の重要性」を強調。さらに「非常に地域的なものから国際的なものまで、省庁間の連携したアプローチ」が必要であるとの認識を示した。
この発言の背景には、麻薬密売組織による暴力がエスカレートしている現状がある。
特に、マルセイユでは11月13日、麻薬密売に反対する活動をしていた若者の兄弟であるメディ・ケサシ氏(20歳)が暗殺される事件が発生した。当局はこれを「威嚇的な犯罪」であり「警告の暗殺」として捜査している。
全国司法警察協会(ANPJ)は、この事件を政府が「転換点」と見なしていると指摘しつつも、「このナルコテロリズム(麻薬テロ)への転落は予測可能であった」と警鐘を鳴らした。協会は、「強力で統合され、連携した司法警察総局」の創設を政府に強く要求している。
マクロン大統領の今回の発言は、麻薬取引の温床となっている社会構造そのものにメスを入れ、消費者の倫理的責任を問うことで、問題解決への意識を高める狙いがあるとみられる。
【出典】20 minutes 11月19日配信記事 『Narcotrafic : Emmanuel Macron fustige les « bourgeois des centres-villes » qui alimentent le trafic de drogues』(https://www.20minutes.fr/politique/4186576-20251119-narcotrafic-emmanuel-macron-fustige-bourgeois-centres-villes-alimentent-trafic-drogues)

