仏政治、解散の危機迫る 富裕税巡り与野党対立

2026年度予算案の審議が大詰を迎えているフランスで、連立政権と最大野党の一つである社会党(PS)の対立が激化し、マクロン政権の基盤が揺らいでいる。PSのオリヴィエ・フォール第一書記は27日までに、政府が富裕層への課税強化で譲歩しなければ、内閣不信任決議案を再提出する可能性を示唆し、「今週末までに解散総選挙の是非が判明するだろう」と警告した。

与野党間の最大の争点は、経済学者のガブリエル・ズックマン氏が提唱する富裕層への「ズックマン税」導入の是非だ。

当初、PSは資産1億ユーロ(約160億円)以上に対し最低2%の課税を求めているが、フォール氏は進展がなければ、資産1,000万ユーロ(約16億円)以上を対象に最低3%を課す代替案を検討すると表明。

これに対し、政府側は「生産や雇用、イノベーションに影響を与えかねない」として強硬に反対している。政府報道官は、PSの要求を「越えてはならない一線」と位置づけ、閣僚が交渉の余地を探る姿勢を見せる一方、フォール氏は富裕税巡る合意がなければ「開戦の口実だ」と一歩も引かない構えだ。

予算の審議日程では、ズックマン税関連の審議が週の後半に延期された。これについて急進左派「不服従のフランス(LFI)」は、PSが政権と「秘密裏に取引」している証拠だと批判。LFIのマチルド・パノ議員団長は、「PSは譲歩し、『ホメオパシー的な』ほとんど効果のない富裕税で手を打とうとしている」と痛烈に非難した。

しかし、フォール氏はルコルニュ首相との接触を「正常な議論」だと主張し、モンシャラン公会計担当大臣も「包括的な取引や不信任不可の協定はない」として、あくまで予算成立に向けた「妥協点」を探る姿勢を強調した。

PSのフィリップ・ブラン議員は、「今週、合意がなければ、全てが崩壊する」と、政権、議会、そして国家が危機に瀕すると強い言葉で訴えた。年金改革の停止を勝ち取ったことで勢いづくPSの動向は、政権の命運を握っており、この一週間、国民議会はかつてない緊張感に包まれる見通しだ。

【出典】20minutes 10月26日配信記事 『Budget 2026 : « A la fin de cette semaine, nous saurons si nous allons à la dissolution », prévient Olivier Faure (PS)』(https://www.20minutes.fr/politique/4181624-20251026-budget-2026-fin-semaine-saurons-si-allons-dissolution-previent-olivier-faure-ps