社会保障赤字が深刻化、会計検査院が警鐘

2025年度の社会保障の財源不足(赤字)は230億ユーロ(約3兆5000億円)に達する見通しで、前年度から77億ユーロの大幅な増加となることが、会計検査院(Cour des comptes)の発表で明らかになった。

フランスの社会保障財政は、かつてないほどに危機的な状況に陥っている。会計検査院は2日、翌3日から国民議会(下院)で審議が始まる社会保障予算案について、「目標達成の実現性に乏しい」と厳しい見解を示した。

予算案は、2026年の赤字を175億ユーロに削減することを目指しているが、会計検査院のピエール・モスコヴィッチ院長は記者団に対し、「2026年に見込まれる歳出抑制策は、非常に野心的で、もろく、ほとんど仮定に基づいている」と指摘。さらに、「議会審議の展開次第では、(2025年度の予測である)230億ユーロの赤字が維持、あるいは増大する可能性すらある」と述べ、この場合、「公的財政全体で設定した財政目標の達成は不可能になる」と警告した。

会計検査院は、経済危機のような要因がないにもかかわらず、社会保障の財政が悪化しているリスクについて、これまでもたびたび懸念を表明してきた。

ルコルニュ内閣が提出した2026年度社会保障予算案は、2024年度の153億ユーロ、2025年度の230億ユーロから、2026年度に赤字を175億ユーロに縮小する計画だ。その根拠となるのは、医療保険支出の伸びをわずか1.6%に抑制するという、2015~2016年以来の厳格な「緊縮」策である。

また、年金や社会手当のインフレ率との非連動化や、医療自己負担額(フランシーズ・メディカル)の倍増など、国民議会内で強い反対意見が出ている措置も前提としていた。

しかし、セバスティアン・ルコルニュ首相は先週金曜、歳入25億ユーロを見込んでいた年金・手当の非連動化策について、実施を断念すると発表した。さらに首相は、病院に対する財政緊縮の圧力を議会が「少し緩める」ことにも賛意を示しており、財政再建目標の達成は、一層困難な状況に置かれている。

【出典】20minutes 11月3日配信記事 『Budget 2026 : La Cour des comptes alerte sur l’aggravation du trou de la Sécu』(https://www.20minutes.fr/economie/4183252-20251103-budget-2026-cour-comptes-alerte-aggravation-trou-secu