【ニュース】社会保障予算 辛うじて可決 仏議会に亀裂

国民議会(下院)は10日未明、政府が提出した2026年度社会保障財政法案(PLFSS)を、賛成247票、反対234票の僅差で可決した。
この採決は、大統領多数派が辛うじて成立にこぎ着けたものの、各政党・会派の「支持」「棄権」「反対」が複雑に絡み合い、フランス政治の構造的な亀裂と再編の動きを鮮明に示した。
マクロン大統領率いる「ルネサンス」および中道の「MoDem」グループは、法案に批判的な姿勢をにじませながらも、規律をもって賛成票を投じ、与党としての責務を果たした。
ルネサンスのピエール・カズヌーヴ議員は、「これは我々の望む予算ではない」と認めつつ、年金改革の停止など「後退」に触れながらも、国の財政の維持を優先したと説明した。
採決の行方を決定づけたのは、野党第一党である社会党(PS)の動きだ。ボリス・ヴァロー議員らが率いる社会党は、マクロン政権への強硬な反対姿勢を貫きつつも、「国民の役に立つ」「極右勢力である国民連合(RN)に民主主義を明け渡さない」という「責任ある野党」としての論理を優先し、賛成多数に貢献した。
これに対し、左派内の急進派である「不服従のフランス(LFI)」は、社会党の協力姿勢を「共犯」だと激しく非難した。
中道・右派の勢力は、法案に対する「不満」を表明する形で大規模な棄権に回った。
- 共和党(LR): ローラン・ヴォキエ氏の路線に従い、大多数が棄権。予算がないことによる社会福祉制度の崩壊を防ぐための苦渋の選択と説明された。
- オリゾン: 棄権を選択。ポール・クリストフ代表は「何も準備しない、国を弱体化させる予算だ」と痛烈に批判しつつも、否決による混乱を避けた。
- 環境政党: 大多数が棄権。「最悪の事態は回避した」との認識を示す。
一方で、極右と急進左派は、テキストを全面的に拒否した。
- 国民連合(RN): 123人の議員が全会一致で反対。「社会的に不公正で経済的に有害」と非難し、「棄権は賛成と同じだ」と、協力的な野党を牽制した。
- 不服従のフランス(LFI): 全員が反対。医療費増額を理由に法案を徹底的に批判した。
- UDRグループ(シオッティ派): 少数ながらも全面的に反対に回り、現政権を批判した。
この日の採決は、フランス議会が政策課題によって流動的に変化する「ア・ラ・カルトの多数派」に依存している現状を改めて露呈し、今後の重要法案審議の難しさを浮き彫りにした。

